戯言スクラップブック

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古井由吉「私のエッセイズム」

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古井由吉本をちゃんと一撮読み切りましたよ。それにちゃんと図書館の返却日に返却(笑)

 

今まで何回かトライしては途中ですが挫折していた古井由吉。あと、何回かトライしたけど読めない人がいてそれは大江健三郎。もう、大江は諦めました。 

古井由吉は多分保坂さんが(保坂和志)著書か何かで古井由吉の事を書いていてそれで興味が出て「白暗淵」を買い、読み始めたのですが、短編集にもかぎらす早々と挫折。何か濃い霧の中に迷い込んだ様な気分になってしまってだめだーったなってしまった。 

その後又吉直樹のフェイバリット作家と言うのが話題にもなり「杳子」こちらも途中まで読んでそのままうやむやになってしまった。

 

ちゃんと読みたいと思いながらも苦手意識がついてしまった古井由吉。この間見た菊地信義の映画で菊池さんが古井由吉作品を装丁しているのを観て衝動的に「雨の裾」わ、買ってしまったけれどこちらはまだ読んでいない。 そんな時に図書館でこちら「私のエッセイズム」を新刊コーナーで見つけてしまった。しかも監修が堀江先生(堀江敏幸)ではないか。

 

初期から晩年まで書かれたエッセイのなかから、古井由吉の文學の核心を照らし出す作品を選び、「小説」からだけでは窺い知ることのできない、氏独持の「エッセイズム」の展開をたどることを目指して編まれている。

p317解題 古井由吉のエッセイズム 築地正明

 

五章に分かれていて

〈I〉作家としての思索と生

〈II〉山

〈III〉戦争・厄災

〈IV〉文学・言葉

〈V〉ドイツ文学

 

最初、作家としての思索と生の章を読み始めてやはり自分には難解でまたもや道に迷うかと思いながらも読み進めていく。著者の幼い頃の戦争体験が(主に空襲の思い出)や、若い頃の入院の話などになるとぐっと読みやすくなって、あっ、道が見えてきたと言う感じだった。後半のドイツ文学はまたちょっと難解になってきたが、この章のカフカについて書かれたエッセイは面白くてカフカを読みたくなった。後、ブロッホも興味が湧いたけれど岩波文庫とかに入ってなかった。

 

いいなと思ったエッセイは他に「埋もれた歳月」と言う作品。戸越銀座の不発爆弾、民家の床下に長い間隠されて放置されていたラジウムから発せられる放射線。その上で何年間も知らずに日々を過ごしてきた人々。そこから話しはドイツ人作家、ヨハン・ヘーベル作「埋もれた歳月」と言う小説に移っていき、このお話がとても良かった。若い坑夫が鉱山に入って事故にあいそのまま遺体があがらず、何年も経って発見される。発見された坑夫は鉱水に浸かっていたのでその時の姿のままだ。

村にはその許婚者が操を守って生きていて、杖にすがりやって来ると、すぐに見分けて、老女が青年を抱きしめる。悲痛よりは喜びに輝いて、とある。

ー 大地はひとたび返したものを闇の中に留め置くようなことはしません

p168 「埋もれた歳月」

 

堀江先生の解説は解説なんだけれどけっこう難しい。古井作品に流れる時間のこと、生者と死者、個と群れ、静まり、境界線、エイッセイと小説。気になる言葉を書き出したがちゃんと理解できたとは全く言えない。

それでもこの様な言葉をいったん自分の頭のどこかに置いて、さて古井由吉の小説に再トライしてみようかなと思う。

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ところで今日4月23日は「サンジョルディの日」本を贈る日って言われて一時本屋さんでフェアみたいのやってましたよね。なんだかいつの間にか無くなってしまった様な。それとも今でもやってるんだろうか?

 

*本棚(読了本)

古井由吉「私のエッセイズム」