上林暁 「孤独先生 上林暁傑作小説集」 山本善行撰
土曜日、日曜日と東京に出かけていた。写真の教室、土曜日は等々力渓谷で実習。日曜日はまた別の講座。そして夜は池袋駅で古市コータローwithウエノコウジのライブ。久々に友達達と会えて楽しかった。
合間合間に読み直していた上林暁「孤独先生」を読む。
インスタグラムに書いた感想
本当は五月に一度読み終わっていたのだが感想を書こうと思いつつ時間がある経ってしまった。思い返そうとパラパラしていたらもう一度読みたくなってしまって再読した。
一話目の「天草土産」を読み進むうちに一度目に読んだ時とは比べ物にならないくらい、「ああ良いな、ああ良いな」と自分自身の内側で呟いてしまう。若い二人の旅行きが初々しくて可愛らしくてなんとも言えない気持ちになる。
十四歳の少女の三重の幼さの残るなかでの恋心みたいなもの、少女ならではの凛とした美しさ。 そして巡る土地の風景、風情も頭の中で想像して一緒に旅するようだ。
この短編集は山本善行氏撰による作品集。善行さんの紹介がなければ私は上林暁を読んでいなかったかもしれない。前回読んだのは「文と本と旅と」こちらも善行さん撰の随筆集。その時も描かれる風景に瞬間ふっと持っていかれるような気持ちがした。けれどその時はまだ自分の中に上林暁と言う作家は浸透していなかったなと今回読んでみて感じた。今回の作品集を読んでしみじみ好きだなと思った。自分の好きな作家の一人になった。
淡々とけれど愛情を持って人物たちが描かれているのがわかる。
そして、再読することの良さを今回は感じた。それも、間を置かないで。中々普段はできないけれど。
好きな話はと思ったけれどどれもどれも、ああこれも、これも、良いんだよな…と思ってしまう。
収録作品
天草土産
淋しき足跡
海山
夭折
トンネルの娘
冬営
清福
景色
二閑人交游図
孤独先生
手風琴は古びた
夏葉社発行。阿部海太さんの絵、そして装丁が素晴らしい。一冊の本を作ることに対する気持ちが伝わってくる。