村上春樹「めくらやなぎと眠る女」

外国の読者に向けて書かれた第二短編集の日本版。村上春樹がイントロダクションにこう書いている。

短編小説は僕がこの世界に置いてきた、ひとつひとつの淡い影のようなものだ。あるいは残してきたささやかな足跡のようなものだ。僕はそれらが残っている場所をありありと思い出すことができるし、その時に自分が感じていたものごとを、脳裏に蘇らせることもできる。そう、短編小説は言うなれば、心の道標のようなものなのだ。

この事は読んでいるこちら側にも言える気がした。何回も読んでいる短編もあれば久しぶりに読んで話の中身を忘れてしまっていたものもあったけれど、読んでいるとふわっと蘇って包んでくるものがある。「心の道標」とは言えないかも知れないけれど自分の内側に風景として刻まれていて何かを考えたり、行動したりする時に多分かかわっているような気がする。
 
 昔のものは懐かしく、ちょっと照れくさく読んだものもあり、「東京奇譚集」に入っている作品はやっぱり今の自分にはしっくりくる。全編に全てのものごとを冷徹に見るまなざしを感じる。それが絶望であっても受け入れる・・・・受け容れて生きていく強さを感じる。


めくらやなぎと眠る女

めくらやなぎと眠る女