よしもとばなな「彼女について」 

 久しぶりにばななさんの小説を読んだ。読み始めたら、あ、っとばななさんの小説の空気がよみがえってきた。ああこんな感じだった・・・・。それから読み進むにつれてどうしてばななさんの小説から離れてしまったんだったかも蘇ってきた。「海のふた」があまり入り込めなくて今の自分とはなにか違う世界を感じて離れたんだった。そして今回の作品もそういう部分はやっぱりあって、ちょっと霊的な部分、オカルトな部分(ちょっと違うか、うまく表せないけれど)。それで読むスピードが遅くなったりしてしまったけれど、途中からそういう部分を通り越しての生きてることの意味、シンプルな、そういう部分がときおり入り込んできてああ存在するって事、生きるって言うこと、それ自体がそのままでいいんだと言うのか・・・・。隈さんと言う人の土台という言葉に「この世に生きるに値すると思う力よ。〜」の部分にはっとさせられた。

 最後、えっと言う展開で少しからだが震えた。

 高いところを強い風が吹いているのか、まわりの高い木々の枝のほうで大きく揺れて、不思議な笛のような音がしていた。光の金色がどんどん強まり、景色の明暗がくっきりとしていた。はるか遠くに細い三日月が見える。きれいな空気の中には乾いた木と落ち葉とお線香の甘い匂いと、さっき活けた花たちの濃い香りが混じって漂っていた。
 昇一の目の中に私が映っていた。確かに私がそこにいた。心細そうに昇一を見ている。それでいいのだ。私はそう思えた。これ以外のものは今ないのだ。
                                                P188

彼女について

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