アブラハム・B・イェホシュア「エルサレムの秋」7冊目

 イスラエル作家の短編2作品。「詩人の、絶え間なき沈黙」と「エルサレムの秋」
「詩人の、絶え間なき沈黙」は作品を書くことをやめてしまった老詩人と障害のある息子の話。静かでもの悲しく憂鬱になるが時々熱くあふれ出す感情がある。言葉をめぐる親子のぶつかりあい。そして愛情が隠されている。
 何回も雨の場面があって印象的。

 「エルサレムの秋」は好きだった女の人の子供を預かることになった男の話。彼女とそっくりなその息子を預かることに興奮し、だけど彼女へのかなえられなかった気持ちゆえ子供を痛めつけたりしている。
「最初はその子のことをあれこれ思い、それから、殺したくなった。だが、なぜかそうはいかばかった。その、なぜ、をぼくはいまだに探りつづけている。」
 ひとりの人間の仲には色んな感情のひだがあってそれがいつどこで顔をのぞかせるかわからない。
 ちょっと面白かったのは蛇を持ち込んだ動物学者で彼のキャラとともにその彼に振り回される様がユーモアさをだしててよかった。

両編とも淡々と時間が流れてて読んでてしんとして心地よかった。巻末の役者の言葉でこの小説が40年ほども前の作品だと知ってちょっと驚く。またこの作者の小説が読んでみたい。出版されるのを願う。

 

エルサレムの秋 (Modern&Classic)

エルサレムの秋 (Modern&Classic)