津村記久子「浮遊霊ブラジル」

2016年に出された津村さんの短編集。積ん読状態になってたのを引っ張り出して読んだ。積読状態になってたけど津村さんは好きな作家です。

初の海外旅行を前に死んでしまった私。幽霊となって念願の地を目指すが、なぜかブラジルに到着し……。川端賞受賞作「給水塔と亀」を含む、会心の短篇集!

【収録作】
「給水塔と亀」…定年を迎え製麺所と海のある故郷に帰った男。静謐で新しい人生が始まる。〈2013年川端康成文学賞受賞作〉

うどん屋ジェンダー、またはコルネさん」…静けさのないうどん屋での、とある光景。

「アイトール・ベラスコの新しい妻」…ウルグアイ人サッカー選手の再婚の思わぬ波紋。

「地獄」…「物語消費しすぎ地獄」に落ちた女性小説家を待つ、世にも恐ろしい試練とは。

「運命」…どんなに落ち込んでいても外国でも、必ず道を尋ねられてしまうのはなぜ?

「個性」…もの静かな友人が突然、ドクロ侍のパーカーやトラ柄で夏期講習に現われて…

「浮遊霊ブラジル」…海外旅行を前に急逝した私。幽霊となって念願の地をめざすが。

内容(「BOOK」データベースより)
ただ生きてきた時間の中に溶けていくのは、なんて心地よいことなんだろう。卓抜なユーモアと鋭い人間観察、リズミカルな文章と意表を突く展開。会心の短篇集!


アマゾンより

津村さんというと自分の中の印象は お仕事小説の人 という印象。お仕事小説って言ってもがつがつ仕事して成功をつかんでいくとかそういう熱血話とかじゃなくて(笑)例えばコピー機に振り回されたりするちょっとトホホな部分をユーモラスに描いて見せたりする、そんな小説を書く人だ。

けれども今回読んだ話はお仕事小説とはちょっと違った。ユーモラスという部分では共通するけれど。

定年後、故郷に戻った男性の日々を淡々と描く「給水塔と亀」はものすごく好きだ。ん?これで終わり?という終わり方がすごくいい。私の中のひとり小説の棚に入れよう。ひとりで静か。だけど悲しくない。理想のひとり。
反対に「地獄」は笑ってしまった。地獄に行った2人のおばあさんの話だけれど・・・あれ?今見返してみたらおばあさんとは書いていない。そして地獄での姿は一番号の深かった34歳の姿って書いてある。なんとなくおばあさんの姿のままで読んでしまった(汗)でもこれはとっても面白くて地獄の鬼にも名字がついていたり不倫で悩んでいたりする。色んな地獄タスクがまた可笑しい。

「浮遊霊ブラジル」も死んでしまったおじいさんが主人公だけれど行けなかった行けなかったアラン諸島旅行への思いのために浮遊霊になってしまう。そりゃアラン諸島なら私だって行ってみたい。わたしだって下手したら浮遊霊になってしまうかも。思わずネットで検索したりしてアラン諸島の画像を見てうっとりしまった。荒涼としてるのに惹かれる。
脱線してしまいましたが、浮遊霊は耳の穴に入ってそのひとに乗り移って移動できる。乗り移ったからと言って何かできるわけじゃなくてただその人の視線と同じものが見えるだけなんだけど。何故かアイルランドじゃなくてブラジルに行くことになってしまう。
これはなんか映画にならないかなあなんて思いながら読んでいた。美しい風景。のりうつった一人一人の生活。

今起こっていることに執着せず、ただ生きてきた時間の中に溶けていくのは、なんて心地よいことなんだろう

いつかこんな風に思えるようになれるといい。

浮遊霊ブラジル

浮遊霊ブラジル