絲山秋子「イッツ・オンリー・トーク」

イッツ・オンリー・トーク

イッツ・オンリー・トーク

 読みました、するすると。この間上京した行き帰りに。絲山作品は「逃亡くそたわけ」に続いて2冊目。表題作の他にもう一作「第七障害」

この本買ったのは「逃亡くそたわけ」よりも前で、本屋でパラパラとやっていたら時々東京で泊まる蒲田が舞台だったり、クリムゾンやらトモフスキーなどという文字が目についたからだった。そのあとしばらく積んどく本になっていて出番を待ってました。

まだ彼女の著書読むのは2冊目なので色々言えないけどその物語となる土地を書くのがうまいな〜と思った。少しでも行った事のある場所は風景を思い浮べながら…しらない土地は文章を読みながら想像してすっと自分も入り込んで行ける感じ。

表題作はデビュー作なんですね。彼女自身の体験もいかされているような感じ。でもよく考えればいないよな〜って思う男の人ばかり出てる。元ヒモの従兄、鬱病のヤクザ、都議会議員の同級生、出会い系のバイトで知り合った痴漢。そんな男達がするするっと出てきて色を点けていく感じ。

個人的にはヤクザさんとの別れが切なかったし、痴漢とのシーンにドキドキした。
点けられていったキャンパスがいっぱいになるのと引き替えにひとり、ひとり消えていくんだけどその空虚感と思い出が切ないな〜と思った。せつなくてもなんでも納得しなくちゃしかたない。時間て流れて行くものだから…。

もう一点の「第七障害」。何故かひかれる題名だな〜と思った、意味はなんだろう。尾崎翠だか安部公房だかの小説にこういう数字を使ったのがなかったっけ?題名に数字が使われてるだけで何故かかっこよくも思ったりしてしまう(汗)

「第七障害」とは乗馬の競技での七番目の障害物であってその七番目で失敗して、乗ってた馬が骨折してしまい安楽死させてしまった事をひきづってる予備校教師が主人公である(長いな…)こちらは舞台が群馬なんだけど凄くいい場所に描かれているんだよな…。なんか群馬の印象が一気に良くなってしまいました。

 表題作とまたティストの違う感じの作品で静かできれいだなと思った。心に苦しみを持ちながら生活していく事の悲しみの静けさ。だけど恋人以前の篤とかかわって行くうちに少しずつその悲しみの雲がはがれていく。

 読後感は温かみに包まれる感じでした。ああ、また好きな作家に出会えたな…。最後、篤と一緒に野反湖にむかう場面は「逃亡くそたわけ」を思い出させた。トモの「ネガチョフ&ポジコフ」を聞きながら群馬を走るのってどういう気分だろう。