朝吹真理子「だいちょうことばめぐり」
朝吹真理子さんの「だいちょうことばめぐり」を読む。気になってた本でこの間久しぶりに図書館に行った時新刊コーナーにあるのを見つけて喜んで借りた。
読んでる間も、読み終わってからも装丁の美しさに惹かれた。花代さんの淡い光を感じさせる写真に金の手書き文字の題名。図書館で借りた本なのでカバーが外せないけれどカバーの下はうすい桃色。そしてなんと地アンカットなのだ。これは初めて見ました。装丁者の意思を感じる。
題名の「だいちょう」とは歌舞伎の脚本のことを指す「台帳」ということばからきているらしい。
「紙の雪」と言うエッセイでいきなりため息がでるような気持ちになった。
雪が降っているから人通りが少ない。道に落ちるころにはやっぱり水になってしまう雪だから雨とほとんど変わらない。それでも傘の上に一瞬、雪の粉がおちてくると嬉しい。歩いていると、ほどろ、ということばがくちからのぼる。雪が薄く降ることをかつては、ほどろ、と言っていた。沫雪のほどろほどろに降りしけばと大伴旅人の歌った一首が「万葉集」にある。奈良時代の人の擬態語はとてもきれいだ。いまアスファルトに雪は降るけれど、ほどろということばをくちにすると、アスファルトがくるくると剥がれていって、土の上に雪が降り敷くのがみえる。
p15 「紙の雪」
著者が古典芸能の世界に親しんでいるから来てるであろう豊かな言葉たち。そしてその言葉がまた私の頭のなかで景色を呼ぶ。
朝吹さんの出自が名家と言うこともあって自分の過ごした家庭とは随分と世界が違うと感じる(お手伝いさんがいたりだとか、秋には毎年ハワイから沖縄に行くとか) そしてその名家のおじょうさんの生活を少し見れたりするのもこのエッセイを読むことの楽しみだ。そして朝吹さんのユニークな部分、雲母の話、母乳の話、など面白くて可愛い。
午後映画を一本 wowwowのW座でやっていた「楽園」 あれ?この話知ってると思ったら原作は吉田修一の「犯罪小説集」の中の2編だった。ちょっと観ているのが苦しくなるような内容だった。特に佐藤浩一が演じたところは山口の限界集落殺人事件がモデルになってると思われ、この話は「つけびの村」と言う本が話題になっていて図書館で借りて読んだ。
人間の奥の闇、そうさせてしまった田舎で暮らすことの息苦しさなどを思う。
夜、夕食時に録画しておいたドラマ「天国と地獄」を見ようと思ったら録画するのを忘れていたらしい。大失敗。今季は「知ってるワイフ」とこれを見続けて来た。肝心の最終回を見逃すとは。最終話、ネットで検索するか。
*映画
楽園
*本棚(読了本)
朝吹真理子「だいちょうことばめぐり」
*読んでいた本
日本文学100年の名作「幸福の持参者」