百年文庫 「川」
どの短編もはじめて読む作品だった。
織田作之助の「螢」は正直言ってこの3作の中で一番ピンとこなくてそれはちょっと悔しいので再読しようと思う。芯の強い苦労する女の人と駄目男と言うのはオダサクの小説のパターンなのかな。しっかりしてて強い女の人なんだけど運命に流されるというか、いや、流されると言うより受け入れる感じか…でも主人公の登勢はそこでしっかりと自分の生きる場所を確立しているように見える。最後にえ、この人ってこの人なんだと思った。でも自分にはそのエピソードさどうでもいいように思えた。
日影丈吉「吉備津の釡」JOJO広重さんおすすめの短編で前から読んでみたいと思っていた作品。恐い話なんだろうなと思いながら読んだので読んでる最初からそういう不安な空気に囲まれながら読む。何がどういう風にすすんでいくのかわからなくて自分も不安な気持ちで水上バスに乗っているようだ。
途中で出てくる話はとても幻想的で漱石の「夢十夜」や、百間先生を思い出したりした。けれど本当に怖かったのはいれこになっている話ではなくて実際に現実に起こった事実の方だった。しかも最後の最後にうならされてじわーっと怖さが昇ってくるような…。その感覚が吉備津の釡の音なのだろうか。しかし、男が託された手紙をよみたくてよみたくて気持も狂わんばかりになるところに凄い同化してしまった(笑)こういう事ってありますよね。
最後は犀星の「津の国人」。こ、これは…凄くロマンチックで美しい。犀星の王朝ものの作品で伊勢物語に題材をとったものらしい。
まるで少女漫画にでも描かれそうなそんな小説だと思った。あとドラマとか…勝手に頭の中で夫を永瀬敏行、貞時を向井理で置き換えてしまったらもうそれしか想像できなくなってしまって失敗した…しかも向井理は全然好きじゃないのに…脳内映像化は危険です。
しかし…こんな筒井みたいな女の人っているだろうか…この描かれ方って。そして便りひとつも寄越さなかった夫の都での生活の方が気になったりする。
- 作者: 織田作之助,日影丈吉,室生犀星
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2010/10/12
- メディア: 文庫
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (2件) を見る