西村賢太「苦役列車」
こちらも文藝春秋3月号で読んだ。面白かった。はじめて西村作品を読んだけれど意外にカラッとしていて楽しんで読んだ。書かれている内容はたぶんしんどい内容であるのだけれどそ何故かユーモアをも感じさせてくれた。ユーモアなどと冗談じゃないと怒られそうだけど、私小説でありながらやっぱりそこにある自分を外側から見ている部分があってだからこそユーモアを感じさせ、陰ではなく陽を感じさせてくれるのだろう。生々しい生を感じさせる。現実に友達にいたら絶対めんどくさいなあと思いそうだけど(笑)でももちろんぎりぎりのところで生きている焦燥感はあって
かかえているだけで厄介極まりない、自分の並外れた劣等感より生じ来るところの、浅ましい妬みやそねみに絶えず自我を侵蝕されながら、この先の道行きを終点まで走ってゆくことを思えば、貫多はこの世がひどく味気なくって息苦しい、一個の苦役の従事にも等しく感じられてならなかった。
という部分を読んだりすると自分も身につまされるような漠然としたものにつつまれてしまうのだけれど。
あと山田詠美さんの選評がとても素敵だった。うんうんと思った。
二日間まったく違うタイプの受賞作を堪能できて良かった。
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