岡本かの子「食魔 岡本かの子食文学傑作選 」
この間読んだ短編のアンソロジーに入っていた「川」という作品がよかったとツイッターで呟いたら、フォローしている方に是非と薦められたのがこの講談社文藝文庫の一冊。実は家にありました、まだ読んでなかった。「家霊」はやはりこういう短編アンソロジーみたいなもので何回か読んだことがあったけれどお薦めの「鮨」を読むのははじめててこれがもう本当に素晴らしかった。食が細くて食べ物をほとんど食べることの出来ない息子になんとか食べて欲しいと母親自らが鮨をにぎって食べさせる。こうして書いてしまうとつまらないんだけど、その場面がもう本当に素晴らしいので皆さん読んでください!なんて。
母親は、嬉しいのをぐっと堪える少し呆けたようなーそれは子供が、母としては一ばん好きな表情で、生涯忘れ得ない美しい顔をして
「では、お客様のお好みによりまして、次を差上げます」
最初のときのように、薔薇いろの手を子供の眼の前に近づけ、母はまたも手品師のように裏と表を返して見せてから鮨を握り出した。
この子供が下町の鮨屋をおとづれる初老の男性の子供時代の話なんだけど、その男性のことが気になって仕方がない鮨屋の娘の気持ちの揺れみたいなものの描かれ方も旨いなあ・・・・としみじみと思ってしまった。
- 作者: 岡本かの子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/02/11
- メディア: 文庫
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