小川洋子「ことり」

鳥籠を抱いて孤独死していたことりの叔父さんと呼ばれた男の人の一生が描かれている。小川洋子さんの世界が広がっていて色んなもの達も小川洋子ワールド。キャンディの包装紙や旅行に持っていくために兄と揃えた品々や、鳥籠製造会社の社史、チョコレート、虫の入った箱、叔父さんがこみかめに貼り付けた小さく切られた湿布。どれもこれも細かく設定されていて思う存分、小川さんの世界を楽しめる。
なぜこんなにもひっそりと暮らしている人々のことを綺麗に美しく描けるのだろう。ポーポー語しか話せないお兄さんを亡くしてからの叔父さんの孤独さがしんと、空気になって自分の中に入り込む。図書館司書への淡い想いも切ない。
だからこそ終盤で描かれることりと叔父さんの係わりが生々しいほど感覚を刺激する。
お兄さん以外の人と通じることの出来なかった感情をきっとこのことりとは交わし合っていたんだろう。
最後まで読んで、そして冒頭に戻ってしばらくまた読んでしまった。このまま読んでいれば永遠にループしていくような…

小川作品の中でもとても好きな1冊になった。

ことり (朝日文庫)

ことり (朝日文庫)