小川国夫「動員時代 海へ」

 小川国夫の死後発見された未発表原稿で未完の作。久しぶりに小川国夫を読んでやっぱり好きだなと思った。肉体の表現とか(母や姉におぶわれた時や、溺れている所を副官に助けられた所や、犬の波打つ背中とか)。戦時中ということもあって「死」という存在がいつもまわりにあって、ときどき自分が自分でなくなるような風景そのものになるような感覚。未完であるので突然ぽーんと終わってしまうけれど投げ出されたような感覚はなくてしばらくその空気の中にいるような感じがした。

動員時代――海へ

動員時代――海へ