磯崎憲一郎「赤の他人の瓜二つ」
磯崎作品を読むのははじめて。
小説の冒頭に「血の繋がっていない赤の他人が瓜二つ」と語り始めた人物はいったい誰なのか。
チョコレート工場に勤める家族の物語、間にチョコレートをめぐる歴史も語られる。
登場人物の誰かに同化して読み進んでいってもなにかするっとはぐらかされるような気持ちになる。それはその人物が何か他人の生を生きてるかのように生きているからかもしれない。
そしていつのまにが視点が兄から妹にかわっていってしまったりしている。
それでいてこれはどこかで感じたことのあるような遠い記憶の感覚。
赤の他人とはいつかの自分なのかもしれない。
過去が私を守ってくれているということ。
孤独に生きていくことを恐れぬこと。
妹の視点の部分が好きだ。
もうひとつの疑問点はラストの部分。これは…何を意味するんだろう…ここは自分にはわからなかった。