小川国夫「夕波帖」

 大分前に買っていて出番を待っていた本。随筆集と言うことで、小説以外の小川国夫を読むのは初めて。最初の耳をすますという随筆にはいつも彼の小説を読んでいる時のような揺らぎのような空気があって凄くいいなと思ったけれど、後は藤枝での思い出であったり母親のことであったり交流のあった人についてであったりで、色んな新聞や雑誌に載せられた文章であるからしかたないけれどそこはすっと読んでしまった。ただ最後の第3部の「身をサドルにゆだね」は若い頃ヨーロッパを旅した頃のことが綴られていて、自分が今読んでいる他の本ともつながって不思議な感覚にさせられた。

 考えてみると小説の作者とは聴覚です。それから、視覚です。五感だとするのが正解かもしれませんが、しかし、五感も便宜的な分けかたですから、感覚の総括とでも言うほうがいいかもしれません。たがいに色層がにじみ合った虹のような束とでも・・・・・。虹は光を映しているだけの無ですし、五感もそうです。こう思って、それならば、小説の作者は限りなく無となろうとしているのか、と考えます。目下考えています。

 表紙やところどころに出てくるイラスト(漫画)は小川国夫によるもので裏表紙では彼自身の頭に大嘘鳥というカラスがのっている(笑)

随筆集 夕波帖

随筆集 夕波帖