多和田葉子「ボルドーの義兄」

 本屋さんで出ているのをみつけて欲しくなってしまったんだけど、そういえば文芸誌に載ってたよなと思って我慢することにした。群像の1月号でした。こんな早いタイミングで単行本になってしまうんだ。

 実は多和田作品を読むのははじめて。時間が行き来する感じ、漢字の見出しで区切られた断片。何のかかわりもなく違う人物のエピソードにうつっていったり、最初読むのにちょっと苦労した。中々集中できなくてぼんやり読んでいたら全然読んでなかったり。これはちょっと駄目だと思いぐっと集中して読んだら途中から楽になってきた。

 何故漢字が見出しのように出てくるのか

「あたしの身に起こったことをすべて記録したいの。でもたくさんのことが同時に起こりすぎる。だから文章ではなくて、出来事一つについて漢字を一つ書くことにしたの。一つの漢字をトキホグスと、一つの長いストーリーになるわけ。」

 主人公の優奈の言葉があらわしているのかもしれない。そしてこの小説はストーリーでもあるのだけれど言葉、言語について語られたものでもある。そこに思いをよせて反転された漢字を感じながら読んでいくとまた違った感触になるのかもしれない。

 優奈をめぐる人々の関係はあいまいであったりする。レネとの関係も恋愛感情にたったものかなと推測させるけれどはっきりとは書かれていないし・・・・。また別にそこここに死の影も漂っている。結局ボルドーに来ることによって優奈はあらたにひとりになるのだ。最後の汝という言葉がこれからのボルドーでの始まりを表している。

 色んなことに注目しながら読んでいけばもっと深く読めるんだろうなと思った小説だった。けれどそう思わずにこうやって読むのもいいんじゃないのかなと思った。だけど単行本はいつか欲しいなあ。装丁が素敵過ぎる!


ボルドーの義兄

ボルドーの義兄