アウグスト・モンテロッソ「全集 その他の物語」

 昨年本屋さんで見かけて手にとっては置いていたけれど雑誌で豊崎さんが紹介してるのを見てやっぱり読んでみたくなって購入。
 とても面白かった。最初の「ミスター・テイラー」「三人のひとりは・・・・・」などを読んでユーモア小説かなとも思ったけれど読み進むにつれて世の中を風刺してるんじゃないかと思ったり、誰もが持っている人間の本質的な部分をちょっと離れた位置で見つめているようなそんな感じがした。
 自分の思っている本当の自分みたいなものを認められたい、実現したい・・・・自信がありながら自信がないと言うのか、そこに不安や恐ろしさを感じる人々。遠くから眺めるとそれは滑稽にも見えてしまうけれど皆そういう思いで日々生活しているんじゃないのかな・・・・。
 
訳者の方のあとがきに

「レポルド(その作品)」は書くことを自分の天職だと考えるのに、書く能力がないために苦しむひとりの作家の話である。その主人公に重なるのは、いつも遠いところばかりを見て、決して満たされることのない思いを抱えている父親、ビセンテの姿である。

とある。モンテロッソの生い立ちや生涯などが語られていて、ああそうなのかと思った。「いつも遠いところばかりを見て、決して満たされることのない思いを抱えている」とは自分にもあてはまることではないのか。

 それと反対に自分では気づかなかった読み方もあり、この訳者の方のあとがきは面白かった。物語は作家だけのものではなくて読者のなかでまた違う変化をするものなのだなあ。


全集―その他の物語

全集―その他の物語