神西清「雪の宿り」

 読みきるのにちょっと時間がかかった。それは一行一行またもどって味わいなおしていたりしたから。自分が存在していなかった昭和初期の空気を感じることが出来る。人の感情までも今のものとは違う透明なものを感じる。それが神西清の文章だからこそ感じるものなんだろうと思わされた。
 「水と砂」「恢復期」では少女独特の透明さとそして毒みたいなものが本当に美しく書かれている。その他に著者自身の自伝的な小説や歴史物など描かれる世界によってその空気感も変わってくるけれど一番好きだったのは「灰色の眼の女」違うかもしれないけれど堀江敏幸を思い出してしまった。ああ・・・・いいなあ・・・・と思いながら読み進む。
 反対に三島由紀夫絶賛の「雪の宿り」は自分は味わい尽くす力がなかった。また再読したい。あと神西清訳のものを色々読んでみたいなと思う。

朝九時ーその日本館の西端の、鍵の手に突き出たあたりの日だまりに、寝台のマットが二枚、かならず乾されるのが例である。それがVの字を逆さに立てたやうな格好で、まぶしいほどに光を吸ってゐるのが、ヴェランダに出て眺めると目にしみる。あの部屋に住んでゐるのはどの家族だか知らないが、おそらく時間の正確な、きれい好きな奥さんにちがいない。いい習慣のよびおこす快感。

 

 

雪の宿り 神西清小説セレクション

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