絲山秋子「ばかもの」

 いっきに読んでしまった。最初のセックスシーンに、えええ!!!と戸惑うが後はもう時間を忘れて読む。
突然年上の女に去られてそこから徐々に徐々に落ちていく主人公。女に去られても普通に大学を卒業して就職もして彼女もできて、それなのに気がつけばアルコール依存症と言う暗黒の中に落ちている。そういうものかもしれないな。普通に生活していると思ってても気づかない足元にそういう穴があいているんだろう。
 むしろ終盤の更正して女と再会しての部分よりも中盤のもがき苦しんでいる部分の方が印象にのこったりしている。高崎競馬場の跡をぐるぐると歩いているところ。絲山さんはまた群馬を高崎という街を描いていてそこに引き付けられる。競馬場の跡に築かれた嘘ものの美しい街。
 もちろん再開してから左手をうしなった女の右腕を洗い腋毛を剃る場面の艶かしさと悲しさと温かさも良いけれど。

 一筋縄で良かったなあと思えないのは「行き場のない思い」に関しての文章があったから。「行き場のない思い」は消えるものなのか。それともそれを持ちながら生きていくと言う事なのかな。あと気にかかるのは「想像上の人物」海辺の仙人みたいなものだろうか?
 自分の元には表れない。

ばかもの

ばかもの