小川国夫「止島」

 今回の旅に何冊か本を持っていったんだけど「止島」を読んだら他のものを読めなくなってしまった。小川国夫さんの作品を今回初めて読んだんだけどちょっとがーんと来てその世界の中にしばらくいたくて。なにか独特の色が漂っていてそれは夕暮れのオレンジの中に墨を流したような感じ。たぶん「亀さんの夕焼け」の印象が強いのだろう。
 亀さんというちょっと昔の時代の男の人が魅力的に3つの物語に時間を前後して描かれていて、老いていくことや、孫への気持ちや、ああ、昔の男の人ってこんな感じだったなあとか思い出したりして(自分の祖父の年代の人たち)孫の女の子の内側でぞわぞわとなる自分では抑えられないものとか・・・・。

 他の短編にも独特の世界があって一話読み終わるたびに一回表紙をとじでぼーっとしてしまった。

 母は、いたずらっぽく笑ってそう言ったが、俺は暗示にかかってしまったのだろう。どこまでも静まり返っていて、幻聴が聞こえてきそうな天地を意識した。目が痛いほど明晰な視界だった。今俺達は山道にいて、永遠の青空に向かって歩いている。


止島

止島